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「5件だけ出す」という雑な制限が、毎朝の道具を生かす

ダウンロードフォルダが肥大化するのは、誰にでも起きることです。私も例外ではなく、数週間放置しているとインストーラーやzipファイル、PDFが無秩序に積み重なり、探したいものが見つからなくなります。そんな状態にうんざりしたある日、Goで小さなCLIを30分ほどで書きました。やることは単純で、ダウンロードフォルダのファイルを更新日時の新しい順に5件だけ表示する、それだけです。

このツールを作ってから、不思議なことに毎朝の作業前に自然と手が伸びるようになりました。Windowsのエクスプローラーでフォルダを開き、カラムを整列させ、不要なファイルを目視で探すという一手間が省けるだけでなく、「5件だけ」という制限があることで、見るべき範囲が人間の短期記憶に収まるのです。5件なら大抵の人は頭の中で一瞬で把握できます。50件を羅列されたら認知負荷が跳ね上がり、結局放置してしまうでしょう。

このCLIには設定ファイルもないし、コマンドライン引数もほとんどありません。パスはソースコードに直接埋め込んでいて、ほかのPCでは動きません。配布を想定した設計では決してないのですが、私のPCの中でだけ動けばいいので、そこは意図的な雑さです。寧ろ設定ファイルがあれば、書き換える手間が増えて毎朝使う気が削がれていたと思います。標準出力に色付きで5行出すだけ、起動して即終了する。その軽さが、毎日使う理由になっています。

便利なアプリほど設定項目が増え、ダッシュボードが華美になり、常駐プロセスが増えていく傾向があります。それは別に悪いことではないのですが、私にはその重さが次第に圧に感じられます。朝いちばんに触る道具ほど、設定画面より標準出力の方が落ち着きます。起動して、情報を受け取って、すぐに消える。そういう道具の方が、長く付き合える気がします。

小さな制限を自ら課すことで、ツールが持続可能になるのは面白い現象だと思います。「全部見せる」のではなく「5件だけ出す」という中途半端な制限が、逆に毎日使う動機を生んでいるのです。完全な整理ができていなくても、最新の5件さえ把握できていれば、今日の作業には支障がありません。明日また叩けば、翌日の5件が表示されます。そうやって少しずつ古いファイルを処理していくうちに、フォルダ全体が自然と整ってきました。

AIにアプリの設計を任せると、大抵は「もっと多くの機能を」「もっと柔軟な設定を」という方向に進みがちです。ユーザーのあらゆるニーズに応えようとするのは、確かに親切な姿勢です。でも、自分の手癖を知っているのは自分だけです。私は5件がちょうどいいことを、実際に毎朝使ってみてようやく理解しました。最初から完璧な仕様を考えようとしなかったので、むしろ使い続けられる道具ができたのだと思います。

小さなCLIには UI もないし、更新通知もありません。zipを置くだけで動いて、削除も簡単です。その脆さの中に、逆説的な信頼があります。壊れてもすぐに書き直せるぐらい小さければ、壊れることを恐れずに使えるのです。ダウンロードフォルダを5件だけ見るという朝の儀式が、今ではPCを開く前の条件反射になっています。

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